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文月の句綴り

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7/1   夜盗虫無辺世界の闇を食む

7/2   しらしらと白き船ゆく白夜かな

7/3   夏の日の水車ざんぶと濡れてをり

7/4   乳房(ちちふさ)の晒布きりりと神輿舁く

7/5   知恵の輪の知恵からからと青葉木菟

7/6   嫋やかに大海わけて海鷂魚の鰭

7/7   御仏の涼しく薄目したまへり

7/8   避難所にすすり泣く子や水禍の夜

7/9   掛香やセピア色なる妓の写真

7/10  古文書の頁を風が昼寝人

7/11  露地ぬける島の夕風竹床几

7/12  忙しなき揚羽よ墓域昏き日よ

7/13  干草の香や満天の星の丘

7/14  箸も地(じ)の竹なる素麺流しかな

7/15  くちなはや水辺に夕のひたひたと

7/16  レモンスカッシュさらりと恋の終り告ぐ

7/17  曳船の水尾(みずお)や蒲の穂をゆらす

7/18  冷房の玻璃に表裏の生まれけり

7/19  霍乱の僧や黒衣のずだずだに

7/20  仙人掌や熱砂の国の姫の悲話

7/21  こと座へと杯を高々生ビール

7/22  かりかりと哭ぶ大地や大旱

7/23  泡沫(うたかた)に鷺の彳む大暑かな

7/24  美(は)しき死の刹那を見たり誘蛾灯

7/25  掌を合はせをれば碑に舞ふ草蜉蝣

7/26  大淀の流れ遅々たり行々子

7/27  羽もてる人うつくしやダイビング

7/28  奥里に宿る一夜や河鹿笛

7/29  島めぐる船は欠航あなご飯

7/30  南山の朝(あした)すがしき夏期講座

7/31  天草(てんぐさ)や海女のぬかづく流人墓
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水無月の句綴り

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6/1   陶枕に覚めて山河の墨絵めく

6/2   昼月のただ麗郎と鵤(いかる)鳴く

6/3   寝冷え子の夢か手足の躍りだす

6/4   人絶えし刻へ投網を渡守

6/5   そよと吹く風のゆかしき芒種かな

6/6   まくなぎに好かれ無数の目に射られ

6/7   産土の神の聲なる田植唄

6/8   出目金や泪の数を計りかね

6/9   初鮎や瀬音ゆたかな峡の里

6/10  甲州の空をもろとも袋掛

6/11  なげ棄てしパセリを鶏が突きをり

6/12  箱眼鏡異界の王のごと覗く

6/13  水喧嘩にはかに雨の降りだせり

6/14  芭蕉布や織機の音のいよ古りて

6/15  行く方の闇をぐらりと牛蛙

6/16  太古へと靡く遺伝子はたた神

6/17  夏風邪の身をもて余す夜の底

6/18  子烏のすでに烏の眼で鳴けり

6/19  まだ尻の青き実梅を打ち落す

6/20  塗り終へし畔をぬるりと梅雨鯰

6/21  雨音に目覚むる夏至の日なりけり

6/22  父母の馴れ初め知らず柿の花

6/23  語り部の時になみだを藺座布団

6/24  追憶の母に似たるや白日傘

6/25  飢餓の世のありし大和や花南瓜

6/26  ゆき会ひの刻をしとどに五月雨

6/27  葛切や信太の森を尋ね来て

6/28  己の影に星の欠けらや麦藁帽

6/29  梅天を舐めてかなしき麒麟の眼

6/30  猛き鵜の女鵜匠を急かせをり




皐月の句綴り

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5/1   馬刀貝の尻か頭かひよいと出づ

5/2   種蒔のただ粛々と歩みをり

5/3   乳房(ちちぶさ)を突きて仔馬の乳こぼす

5/4   きらめきを放つ水音春の果

5/5   木々のみな雄々し名を持ち夏来る

5/6   薄暑光小犬に妊婦ひかれゆく

5/7   若夏の蝶や愛視を惜しみなく

5/8   滝壺や月下に虹を育てしむ

5/9   黒潮の黒なる色や初鰹

5/10  青葉若葉少女を森の妖精に

5/11  北國の濱はごろたや昆布刈

5/12  歳無のチヌか潮(うしお)を糸が裂く

5/13  皺ふかき木地師の敷ける円座かな

5/14  夏の夜のだらりと掌より落ちしもの

5/15  ふるさとのなつかし蚋の羽音さへ

5/16  我も欲も失せてひとりの一夜酒
         *(甘酒)

5/17  落日へヨットの影の沈みゆく

5/18  かはほりや逢魔が時のひた寄する

5/19  壊落のしるき城址や花茨

5/20  麻服のさやかな風とゆき違ふ

5/21  小満や河馬のあくびに歓呼湧く

5/22  君はいま夢の虜よアイスティー

5/23  隠れたる子等のゆらすや花かつみ
        *(真菰の花)

5/24  繡線菊(しもつけ)を咲かせ峠の茶屋昏し

5/25  逃避めく鄙の宿りやと籐寝椅子

5/26  火の國の道を急かすや閑古鳥

5/27  働けど働けどあゝ蟻の列

5/28  果たせえぬ立志笑へり柿若葉

5/29  わたつみは大きゆりかご烏賊火燃ゆ

5/30  夏葱の青さ苦さよ郷捨てて

5/31  言の葉のごと真清水のとくとくと

卯月の句綴り

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4/1   臍曲げて黙りゐる子やつくづくし

4/2   思慮ふかき鷹のまなこゐ凍返る

4/3   あな嬉し田楽の香も郷の香も

4/4   清明やひよめきの弥かろやかに

4/5   巫女舞の顎(あぎと)美し花明り

4/6   寄り添うて影をひとつに花の冷え

4/7   微睡みにそそぐ鳥語や養花天

4/8   青柳や汝は天帝のなすままに

4/9   草を摘む少女よ穢れなき空よ

4/10  目瞑りて駱駝は何を霾ぐもり

4/11  きらめくは小鮎か夕の洗ひ堰

4/12  子雀のこゑせつせつと時の隙

4/13  老いてなほぬけぬ訛りや桃の花

4/14  静脈をさぐる女医の手春の蚤

4/15  峡の子のあそびしたたか杉の花

4/16  艶唄のまだるし哀し干鱈裂く

4/17  刻々と変る日の影種案山子

4/18  天平の都まぢかき野に遊ぶ

4/19  限りある今世のならひ揚雲雀

4/20  ことさらに土のにほへる穀雨かな

4/21  四つの目の瞬時の間合ひ鶏合

4/22  星影の杏の花におぼれをり

4/23  その中に妣のおもかげ茶摘唄

4/24  子のこゑの絶えし奥里母子草

4/25  僧ひとり鰊曇の岩鼻に

4/26  大鯉の吐息つく午や春闌くる

4/27  子も魚も泥に塗るや春干潟

4/28  杣郷の荒るるにまかせ雉の聲

4/29  永日のながき吾が影もて余す

4/30  蛙子を双手掬ひに見せし子よ

弥生の句綴り

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3/1   耕人の土につぶやくごとくせり

3/2   春愉し枯木に雲のおよぶさへ

3/3   いとやはき雨にけぶるや雛の灯

3/4   山ふかき郷が自慢や蕨餅

3/5   啓蟄の足裏なにやらむず痒し

3/6   蟇穴を出づるや地軸傾けて

3/7   巣乙鳥の月下に羽をたたみをり

3/8   友よ師よ昔日へとぶ春堤

3/9   凧糸の端(は)を弟に持たせやる

3/10  かかる世の末を見むとて蝶生る

3/11  錆ふかき獣の掛罠雪解風

3/12  炭窯の崩れ凄まじ幣辛夷

3/13  雪形や日毎に里の騒めける

3/14  ゆくりなく嫁ぐはなしを春炬燵

3/15  遍路笠の影を二つとふと見たり

3/16  朝焼のやはらに桑の芽吹く里

3/17  荒東風の駱駝や眼とぢしまま

3/18  ニュートンにあらがふ夕の赤椿

3/19  竿先の空をひらひら子持鯊

3/20  小鳥もや彼岸桜に身なげをり

3/21  さざなみは風の絵手紙氷消ゆ

3/22  来し方のおもひふつふつ菊根分

3/23  葺替の空へ荒縄しめる音

3/24  発破音やみて雪崩るる響きあり

3/25  痩馬を曳きゆく奥の春祭

3/26  霞たつ野辺を花嫁行列来

3/27  潮躱すたびに傾ぐや観潮船

3/28  うらうらとこもれびゆるる弥生かな

3/29  一撃をもて初雷の遠ざかる

3/30  左手に愛を右手に風船を

3/31  三笠なる山を間近や春心

如月の句綴り

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2/1   寒灸の火を点じよと呼ばれたり

2/2   寒柝や書に栞して一日閉づ

2/3   底なしの峡の真闇や鬼やらひ

2/4   立春大吉ひかりざざめく水ほとり

2/5   行き場なき畔火の終の猛りかな

2/6   惜別の傘の重さや牡丹雪

2/7   春の田へ鍬の一打を父若し

2/8   初音してあけゆく郷の目覚めかな

2/9   紅梅や逢はぬと決めし人をふと

2/10  ゆさばりにちぢとみだれてゆくこゝろ
       *ゆさばり=ぶらんこ

2/11  潮の香をはこぶ川風白魚鍋

2/12  風を朱に染むる社や一の午

2/13  父母のなきことをしみじみ春景色

2/14  紅貝やわだつみはただ黙しまま

2/15  こま返る草やしんがり歩く癖

2/16  大海のあるを知るかに春の水

2/17  ふつと消ゆ鳥の足跡春の霜

2/18  白鳥(しらとり)の水に影おく雨水かな

2/19  背に敷ける草芳しや少年期

2/20  明日香路の時をとどめてかぎろへる

2/21  燈台の灯のばうばうと春の海

2/22  囮籠提げし子のゆく木の芽山

2/23  豺狼(さいろう)の声の谺か構ひ時
       *構ひ時=三春の生類季語で獣の交尾期

2/24  雪片の濡らす御厨子や出開帳
      *本尊が安置された寺で開かれる【居開帳】
       に対して、他の寺や場所で行われる拝観行事

2/25  貌鳥の鳴くや濁世を逆しまに

2/26  風あらば風と消えゆく胡蝶かな

2/27  片栗の花に夕べのいよ早し

2/28  川舟を舫ふ川淀だびら雪



睦月の句綴り

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1/1   天地にあはひなるもの初明り

1/2   笛太鼓獅子の乱舞をせかせけり

1/3   年玉や里の子の目のらんらんと

1/4   繭玉にふれんとややの手のをどる

1/5   風花や湯上げの鷄の羽根毟る

1/6   夜気せまる辻の易占達磨市

1/7   かりそめの火とて雄々しや出初式

1/8   鳥総松三和土に月の影射せり

1/9   成人の日や子のなきを妻が謂ふ

1/10  初場所や四股名の富士を語尾ながく

1/11  街道のとある旧家や蔵開

1/12  気ままなる天の配剤絵双六

1/13  紅白の綱の意のまま猿廻し

1/14  身軽なる己(おのれ)かなしき旅はじめ

1/15  終点は過疎の一村雪女郎

1/16  猫舌の妻よ釜揚うどん吹く

1/17  凍凪や小舟小島の時とめて

1/18  雨は夜に霙に嵯峨の抜け小路

1/19  枯菊や放香あまねし夕をふと

1/20  大寒の星ことごとく明滅す

1/21  夢の中の妣ひたすらに菜を洗ふ

1/22  ひそやかに紅侘助の一つ落つ

1/23  風つよき夜や切干大根煮る

1/24  太古からとどく絵文や寒茜

1/25  砕氷船星の座標を描くごと

1/26  霜柱離村の一戸傾ぎたり

1/27  出稼の前夜囲炉裏の火の猛る

1/28  燗酒や舌なめらかによき嘘を

1/29  朔風や吾が身ひそかに世に置きて

1/30  月影や狢住むてふ古祠

1/31  奥底を見せぬ天上雪下し

十二月の句綴り

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12/1  刻はやき温室といふ異空間

12/2  風邪に倦む妻の声音を案じをり

12/3  海鼠腸や海女の啖呵の心地よく

12/4  ふるさとや父の遺品のちやんちやんこ

12/5  けふもまた嶺をかくせりうつた姫

12/6  浅漬や白磁は彩に逆らはず

12/7  人殺す一語一句や寒北斗

12/8  みそさざい人なき里にきて鳴けり

12/9  猟銃音ひとつ消えゆく命ひとつ

12/10 沖島の影をあらはに雪起し

12/11 猫町の猫の集会十二月

12/12 鷹匠も鷹も一点見つめをり

12/13 菰巻のしんしんと夜を耐へゐたり

12/14 野末ゆく影ひとつだに冬の虹

12/15 襤褸市や昭和はすでに昔なる

12/16 どの夢を見やうか夕の浮寝鳥

12/17 凄まじや深雪に鳥の羽と血と

12/18 枯落葉きのふの上にけふを積む

12/19 米を研ぐ音の淋しや寒苦鳥

12/20 裏背戸の薄ぼんやりと雪催

12/21 狐火を見に行かうかと云ふ女

12/22 冬至湯の痩躯よ湯の香あふれしむ

12/23 数へ日の言の葉すぐに消えたがる

12/24 年木樵谿に昼餉の火を熾す

12/25 無位無官なる身を終天神へ

12/26 裸婦像の黯き眼や暮早し

12/27 つつがなく過ぎしたつきや札納

12/28 群鳥の声を寒涛かきけせり

12/29 天地の底位をひそと霜の声

12/30 農小屋の梁の古釘注連飾る

12/31 ほろほろと沈みゆく日や年の果



十一月の句綴り

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11/1  鶏鳴に目覚むふるさと秋の霜

11/2  ことさらに赤き入日や末の秋

11/3  デジャビュのごとく花野の道ありぬ

11/4  指笛の谺する里牧閉す

11/5  豆柿を啄む鳥のなかりけり

11/6  風のなき夜をほろほろと芒散る

11/7  銃眼の肌(はだえ)てらてら冬来る

11/8  嫁がざる叔母や小菊を慈しむ

11/9  帰路を急く夜の靴音冬めけり

11/10 磊落な神のまぐはひ冬星座

11/11 練炭の灰に汚れし裏戸かな

11/12 熊穴に入りてそぼつく山雨かな

11/13 荒れに荒る玄界灘や博多場所

11/14 子の屍いだく野猿や冬の月

11/15 おでん屋の灯に引力のありにけり

11/16 月日疾く逝きふたたびの枯野宿

11/17 子守唄聞かすや夜着をひき寄せて

11/18 牡蠣殻を捨てむと見れば七色に

11/19 冬の雲マリアの像に翳させり

11/20 人寝ねしあとの郷曲枯木星

11/21 沢庵漬ほどよき風を婆が読む

11/22 小雪や峡のひと日の足早に

11/23 冬帽の翳りある眼をかくしけり

11/24 ものの怪のつつむ草の戸牡丹鍋

11/25 冬耕の凹田遅々たる影二つ

11/26 蒼天をたまはる一日干菜吊る

11/27 木菟の呼ぶ闇の王国ひそとあり

11/28 舷梯を革ジャケットの駆けのぼる

11/29 潮騒のやまぬ浦宿置炬燵

11/30 枝打の鉈音峡に谺せり

十月の句綴り

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10/1  朱鷺よ朱鷺よ色なき泥を啄める

10/2  暮れるだけ暮れてほのかな秋葵

10/3  小仏のありしあたりか初紅葉

10/4  裏木戸の虫の闇へとつづきをり

10/5  秋茄子や母御嫁御の恙なく

10/6  規律あるごと藁塚の整列す

10/7  火山灰(よな)の降る國や模糊たる秋灯

10/8  川魚を盥に移す寒露かな

10/9  笑栗のこぼす夜雨のしづくかな

10/10 ほろほろと錆びゆく萩を刈りにけり

10/11 来し方の道をかくすや芒原

10/12 竈馬母はたつきの火を熾す

10/13 ブルースのやうな街の灯秋時雨

10/14 風道の弁慶草やたぢろがず

10/15 荒びゆく郷の山河や栗強飯

10/16 渋柿のたわわ熟るるにまかせあり

10/17 雁や余呉湖の里の点りそむ

10/18 草の実の飛ぶや流離を躊躇はず

10/19 月よみのひかり幾重に実紫

10/20 石投げて去りし少年秋の川

10/21 名庭の天へ鋏を松手入

10/22 足早に暮るる山里火の恋し

10/23 霜降の駅舎や人のなに待てる

10/24 影ひとつゆきつもどりつ菜種蒔く

10/25 風音になびく裾濃や竜田姫

10/26 北へやや地軸をもどし牛蒡ひく

10/27 飛鳥野の空の黒点鶸ならむ

10/28 少年のやうな少女や万年青の実

10/29 冷まじや寺の鉄扉の裸身仏

10/30 手応へのしかと匠の鯊の竿

10/31 雑木紅葉離村の屋を侵食す

九月の句綴り

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9/1   稲の香を纏うて父の帰り来る

9/2   西海の陽のたらたらと青瓢(あおふくべ)

9/3   地芝居の佳境に猫の乱入す

9/4   また巡り来し一葉の夕べかな

9/5   膝折りて息を殺して鉦叩

9/6   鼠尾草(みそはぎ)や平氏の裔の墓ひそか

9/7   任侠の映画看板秋湿り

9/8   道なりに水の流るる白露かな

9/9   日の射せば日の一筋や秋の湖

9/10  手まねくは異国の嫁御葡萄園

9/11  開け放つ牛舎の大戸鵙日和

9/12  ゆきちがふ人の小灯し狐花

9/13  童女笑へり唐黍に爪を立て

9/14  母見ゆるなぞへの畑や芋嵐

9/15  霊山に舫ふがごとき月の船

9/16  道のなき穹をたがへず鴨来る

9/17  奥琵琶の稲干す里のしじまかな

9/18  島中の家がからつぽ体育祭

9/19  無限なる穹よ流離よ草の絮

9/20  寄る辺なき鴎が1羽秋の湖

9/21  暗がりを嫌ふ少女や秋薊

9/22  鮎落ちて漠たる山河のこしけり

9/23  秋分の日差しやさしく児(やや)を抱く

9/24  道草をかくす子の裾しらみ草

9/25  地にかすか水のにほひや秋の蝶

9/26  かの人の孤影をしかと秋袷

9/27  秋燕や渡海の舟の出でし浜

9/28  阿闍梨逝くや有明月を待たずして

9/29  秋の夜のレコード盤の波打てり

9/30  捨案山子銀の翼をくれと謂ふ

八月の句綴り

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8/1   真昼間の人なき里や田水沸く

8/2   優曇華の野に踏み出すを躊躇へり

8/3   サーファーをもろとも波のふつと消ゆ

8/4   途絶えたる風のたよりや韮の花

8/5   破戒僧のごとく極暑へ墜ちゆけり

8/6   八月六日地を這ふ蟻の一途なる

8/7   まどかなる馬の眼差し秋に入る

8/8   妻留守の夜のはじかみを噛みてをり

8/9   八月九日海平らかに日をかへす

8/10  鰯網みすゞは海の底詠ふ

8/11  己が影のちろろちろろと鹿火屋の火

8/12  懸煙草くぐり身重の子が帰る

8/13  枝折戸に見知らぬ小鳥秋の朝

8/14  子等去りし夕べの河原荻騒ぐ

8/15  吾もまた群の一翼敗戦忌

8/16  残る蚊のこゑのか細く失せにけり

8/17  八月大名夜通し点る母屋の燈

8/18  南国の潮(うしお)黒々秋鰹

8/19  闇ふかき夜はことさらに草雲雀

8/20  八月の空美しく恐ろしく

8/21  なにさぐるべくすいつちよのながき髭

8/22  露草やよきことのみを胸奥に

8/23  とりどりの鳥語たのしき処暑の朝

8/24  鹿垣に沿ふ古里の小径かな

8/25  きちきちの地を蹴り草に沈みけり

8/26  夕暮れて尾花は月に靡きをり

8/27  ほのかなる潮の香りや捨扇

8/28  風生れていよよはかなし萩の花

8/29  何すべく下りし小庭や爽気満つ

8/30  眼光のきりりと鷹の山別れ

8/31  猟奇めく街の路地裏夜霧這ふ




七月の句綴り

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7/1   群生といへるさびしさ水芭蕉

7/2   バラックの屋根しらしらとさみだるる

7/3   母の忌の氷雨にけぶるなぞへ畑

7/4   岩燕ときには鄙の軒に鳴く

7/5   沈みゆく日のけだるさや百合の花

7/6   一点の序章に吐息夕蛍

7/7   雀蛾(ほうじゃく)の舌のささやく小暑かな

7/8   手をとめて在の謂れを草取女

7/9   箒木の影箒木でありにけり

7/10  夕日濃くにほふ旅路や野萱草

7/11  まひる間の水ねつとりとあめんぼう

7/12  愛憎をあらはに蜥蜴遊牝みをり

7/13  夜濯の音ややすけし遍路宿

7/14  すててこやれろれろれろと生き死なん

7/15  雷鳥もケルンも霧にねむりをり

7/16  青芒きりりと甲斐の晴わたる

7/17  幼子の空切るばかり捕虫網

7/18  御来迎万に一つを信じをり

7/19  古民家に宿る一夜や山女焼く

7/20  楊貴妃のごとくに蚊帳をくぐりをり

7/21  紫蘇の香や妣の姉さん被り見ゆ

7/22  吽形の口ひらかんとせし大暑

7/23  文月のハッパフミフミ巨泉ゆく

7/24  哀しめばいよよ哀しく蝉の聲

7/25  登山小屋夜気しんしんと被さり来

7/26  城壁に刻む國の名氷旗

7/27  丑三つの風鈴舌をたれしまま

7/28  水音のあればあそぶ子梅雨あがる

7/29  蓮咲くを待つ人影や夏の暁

7/30  とある日の女の嘘や胡蝶蘭

7/31  昔日へ馳せる足裏(あうら)や砂炎ゆる



六月の句綴り

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6/1   透きとほる宇陀の水音九輪草

6/2   沢蟹を掴みて笑顔見せし子よ

6/3   土佐沖の潮黒々鰹船

6/4   子燕の一羽遅れて嘴ひらく

6/5   野を統べる芒種の雨となりにけり

6/6   田植女の夜はみどり児を抱きねむる

6/7   蝦蟇朝な夕なを泰然と

6/8   野仏の供花の一輪梅雨の闇

6/9   海猫の鳴くや荒びゆく浦の里

6/10  軽鳧の子の蓮の浮葉をゆりかごに

6/11  遠き日の夢の一日(いちじつ)ソーダ水

6/12  雷去りていよよせつなる夜の懈怠

6/13  ゆき違ふ人のうつろや蛍狩

6/14  鬼虎魚喰はず嫌ひをふかく恥ず

6/15  島影も小舟も暫し海霧(じり)の中

6/16  雪解富士はるかや波の立ち上がる

6/17  はらからのみなすこやかや釣鐘草

6/18  蝸牛や刃のごとき薔薇の棘

6/19  巫女の汲む音のすがしき噴井かな

6/20  病葉と聞きし一葉のうつくしく

6/21  蓮の葉のただしらしらと夏至の月

6/22  兄の手の大鍬形をまぶしめり

6/23  母は子のまなこの中や汗疹癒ゆ

6/24  白靴の少女や放射線量計

6/25  十字架の影よりふいと黒揚羽

6/26  走馬燈かの世の影を濃く淡く

6/27  蠍喰ふ國より来たる女と会へり

6/28  星のなき街に灯の星ビヤガーデン

6/29  雄岳より降りくる霧や紅の花

6/30  ほの暗き森のこもり沼蛭およぐ

五月の句綴り


20160531.jpg


5/1   巫女のふとふりむく春の名残かな

5/2   鯛網を曳くや響灘(ひびき)の潮ごと

5/3   三猿のうつろ憲法記念の日

5/4   少年のかくす傷跡修司の忌

5/5   ヴィオロンの弓しなやかに夏来る

5/6   蟭螟(しょうめい)やかぼそきこゑを常夜より

       *蟭螟=想像上の極小な虫

5/7   華やぎのなくも群れ咲く踊子草

5/8   姫鱒のひらりと森をひるがへす

5/9   風纏ふごとかろやかに夏衣

5/10  道草の小さきてのひら草いちご

5/11  水の上(へ)に卯月曇の影させり

5/12  古の都人見ゆ菜殻火に

5/13  ほの昏き蔵に鮓圧す女かな

5/14  おはぐろのぬれたる岩をはなれざり

5/15  眠そうな稚児よ葵のまつり過ぐ

5/16  薔薇に似しパラソル薔薇に佇めり

5/17  平らかな水にねむるや夜の闘魚

5/18  駒鳥や驟雨の過ぎし峠道

5/19  小満の空をながるる鳥一羽

5/20  鈍き日をかへす河馬の背夏浅し

5/21  朝靄の水滴らせ鰻獲り

5/22  夕闇の底や湧き立つ蛾の羽音

5/23  ひたひたと鳰の浮巣の打たれをり

5/24  ままごとの子の花茣蓙に招かるる

5/25  蜘蛛の子の阿鼻叫喚の別れかな

5/26  蛇の鬚の花蔭のつとうごめける

5/27  わたつみを切り裂く巨船青岬

5/28  昏きより出でて昏きへ羽蟻の夜

5/29  ダービーの華やぎに身をゆだねたり

5/30  月光にねむる奥社や袋角

5/31  茅花流し雅楽の舞のたをやかに


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