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六月の句綴り

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6/1   透きとほる宇陀の水音九輪草

6/2   沢蟹を掴みて笑顔見せし子よ

6/3   土佐沖の潮黒々鰹船

6/4   子燕の一羽遅れて嘴ひらく

6/5   野を統べる芒種の雨となりにけり

6/6   田植女の夜はみどり児を抱きねむる

6/7   蝦蟇朝な夕なを泰然と

6/8   野仏の供花の一輪梅雨の闇

6/9   海猫の鳴くや荒びゆく浦の里

6/10  軽鳧の子の蓮の浮葉をゆりかごに

6/11  遠き日の夢の一日(いちじつ)ソーダ水

6/12  雷去りていよよせつなる夜の懈怠

6/13  ゆき違ふ人のうつろや蛍狩

6/14  鬼虎魚喰はず嫌ひをふかく恥ず

6/15  島影も小舟も暫し海霧(じり)の中

6/16  雪解富士はるかや波の立ち上がる

6/17  はらからのみなすこやかや釣鐘草

6/18  蝸牛や刃のごとき薔薇の棘

6/19  巫女の汲む音のすがしき噴井かな

6/20  病葉と聞きし一葉のうつくしく

6/21  蓮の葉のただしらしらと夏至の月

6/22  兄の手の大鍬形をまぶしめり

6/23  母は子のまなこの中や汗疹癒ゆ

6/24  白靴の少女や放射線量計

6/25  十字架の影よりふいと黒揚羽

6/26  走馬燈かの世の影を濃く淡く

6/27  蠍喰ふ國より来たる女と会へり

6/28  星のなき街に灯の星ビヤガーデン

6/29  雄岳より降りくる霧や紅の花

6/30  ほの暗き森のこもり沼蛭およぐ

五月の句綴り


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5/1   巫女のふとふりむく春の名残かな

5/2   鯛網を曳くや響灘(ひびき)の潮ごと

5/3   三猿のうつろ憲法記念の日

5/4   少年のかくす傷跡修司の忌

5/5   ヴィオロンの弓しなやかに夏来る

5/6   蟭螟(しょうめい)やかぼそきこゑを常夜より

       *蟭螟=想像上の極小な虫

5/7   華やぎのなくも群れ咲く踊子草

5/8   姫鱒のひらりと森をひるがへす

5/9   風纏ふごとかろやかに夏衣

5/10  道草の小さきてのひら草いちご

5/11  水の上(へ)に卯月曇の影させり

5/12  古の都人見ゆ菜殻火に

5/13  ほの昏き蔵に鮓圧す女かな

5/14  おはぐろのぬれたる岩をはなれざり

5/15  眠そうな稚児よ葵のまつり過ぐ

5/16  薔薇に似しパラソル薔薇に佇めり

5/17  平らかな水にねむるや夜の闘魚

5/18  駒鳥や驟雨の過ぎし峠道

5/19  小満の空をながるる鳥一羽

5/20  鈍き日をかへす河馬の背夏浅し

5/21  朝靄の水滴らせ鰻獲り

5/22  夕闇の底や湧き立つ蛾の羽音

5/23  ひたひたと鳰の浮巣の打たれをり

5/24  ままごとの子の花茣蓙に招かるる

5/25  蜘蛛の子の阿鼻叫喚の別れかな

5/26  蛇の鬚の花蔭のつとうごめける

5/27  わたつみを切り裂く巨船青岬

5/28  昏きより出でて昏きへ羽蟻の夜

5/29  ダービーの華やぎに身をゆだねたり

5/30  月光にねむる奥社や袋角

5/31  茅花流し雅楽の舞のたをやかに


四月の句綴り

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4/1   泥沼の恋あり闇を這ふ蛙(かわず)

4/2   既視感といへる不可思議連翹忌

4/3   屋根替の梯子をのぼる女かな

4/4   あえかなる花のあはひを鳥交る

4/5   利休忌や生きとし生けるものの翳

4/6   山霧のしとど濡らすや忘れ角

4/7   東雲や麻疹の癒えし児の笑ふ

4/8   春の蚊の魂なきごとく揺蕩へり

4/9   一水の日毎きらめく柳陰

4/10  小鬼大鬼安楽花(やすらいはな)に囃されて

4/11  蝶と化す菜の花あらん時の隙

4/12  闘鶏の血の跡しるき黄土かな

4/13  十三詣ちらと少女を見遣りをり

4/14  夜の風の攫ふ残花のひとひらよ

4/15  吾を呼べるかぼそき声や春の虹

4/16  目薬にひらくまなこや木の芽晴

4/17  青海苔や波の形の波の影

4/18  銀杏の花や旅なる日の疾くと

4/19  木苺の花や月降る岨の道

4/20  眠りたる子を背に帰る磯遊

4/21  ほこほこと土のふくらむ穀雨かな

4/22  暮れがての里やかそけし鷽の声

4/23  処女受胎てふ奇跡ありなんうまごやし

4/24  赤き爪もてネーブルを剥く女

4/25  笛の音に似し風音や熊谷草

4/26  おたまじやくし日のある方へ歩みゆく

4/27  桜桃の花や真白き夜の底

4/28  亡国の都ありなんかひやぐら

4/29  地の声に耳かたむけて翁草

4/30  遠き日のほつりほつりと忘れ潮

三月の句綴り

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3/1   黒北風の浜に老爺の遠眼差し

3/2   春暖炉あるかなきかの火をつつく

3/3   新たなる恋かも知れず春衣

3/4   空に手をふれたがる子や春夕焼

3/5   啓蟄のまづは鶫の腹満たす

3/6   土筆摘むことに飽きたる二人かな

3/7   きりきりときりと百枝(ももえ)の芽ぐみけり

3/8   誰がために出づ桃園の昼の月

3/9   蘖や帰るに遠き父母なき地

3/10  悔恨を呑みし眼や山葵漬

3/11  かたかごの花や母恋ふ僧ひとり

3/12  鳥雲に人は荒野(あれの)をさまよへり

3/13  高畑を抱く朝霧春大根

3/14  合格子不合格子と相寄れり

3/15  ぎこちなきピエロの笑みや凍返る

3/16  ふらここの力かぎりに哀しめり

3/17  放たれし駿馬雪間の草を食む

3/18  夢の世のありやと蜥蜴穴を出づ

3/19  神の座の山に礼して苗木植う

3/20  水分けてゆく春分の魚の背ナ

3/21  親鳥の痩せすさまじや雀の巣

3/22  花待てる山や気息の充ち充ちて

3/23  何もかも夢まぼろしや涅槃雪

3/24  宵闇のしだれ櫻やよく揺れて

3/25  隠沼(こもりぬ)の泰然自若氷解

3/26  泣く妹を負いてゆく坂月朧

3/27  貝寄風や唐紅の血の系譜

3/28  あまたびび夜を裂く雷や雁供養

3/29  春林の空にあそべる木魂かな

3/30  日出づる國や礫のつばくらめ

3/31  ミモザ撮る人へミモザのふりそそぐ

二月の句綴り

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2/1   湯気立てて美しきのんどを濡らしをり

2/2   梅といふ形に梅の咲き初むる

2/3   よせ返す護摩の焔(ほむら)や節分会

2/4   水鳥の羽音ゆたかに春立てり

2/5   春寒や胸あらはなる乙女像

2/6   強東風や愚かに人の歩みゆく

2/7   有明の夕日もろとも白魚網

2/8   脚弱の妻に合はす歩遍路杖

2/9   たかぶれる火をなだめつつ畦を焼く

2/10  帰心なほ三椏の芽のふつふつと

2/11  味噌玉に風きりきりと木地の里

2/12  ぎこちなく終る一日や田螺鳴く

2/13  先づは香をしかして苦味焼栄螺

2/14  相聞をかはす三山薄霞

2/15  魚は氷に上りて月のしんしんと

2/16  潮騒のとどくや馬刀貝(まて)の穴ふかく

2/17  春菊を摘みし手の香や夜もなほ

2/18  児のよれば児にふれなんと枝垂梅

2/19  糸舐めてさぐる雨水の針の穴

2/20  峨眉ぬらす雪の一片多喜二の忌

2/21  川筋の灯の点々と獺祭

2/22  春の鵙ときにせつなきこゑあげて

2/23  沈みゆく日ののつたりと浅蜊汁

2/24  春の夜や父ともなれず母ともなれず

2/25  万葉の杜にねむるや孕鹿

2/26  潮焼けの掌のわらわらと白子干す

2/27  遠き日の記憶さだかに蓬萌ゆ

2/28  やはやはとわが身ながれむ春の闇

2/29  槌音も瀬音も凛と二月逝く







一月の句綴り

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1/1   あかときの空うるはしや大旦

1/2   初買の妻よ倹しきものばかり 

1/3   三日はや白湯の旨くてならぬなり

1/4   息あらき禰宜の烏帽子や鞠始

1/5   奉るほのかなる火や窯始

1/6   小寒や天使は羽根を閉ぢしまま

1/7   うすれゆく母のおもかげ薺打つ

1/8   四方の目をひとり占めなる春着の子

1/9   ちはやふる神の恋せし歌留多かな

1/10  羽子板やただすこやかであれかしと

1/11  音もなくあけゆく一里淑気満つ

1/12  裏山に鵺の鳴く夜や榾あかり

1/13  ひとり子のひとりあそぶや福笑

1/14  歌会始め言の葉天を翔けるごと

1/15  左義長の焔や炎そだてしめ

1/16  風を名でよぶ村里や成木責

1/17  寝静まる浦の一戸や寒波急

1/18  まだおなじ小枝をふくら雀かな

1/19  氷海や無音なる夜の怖ろしき

1/20  内地てふ人や石狩鍋囲む

1/21  大寒の空一枚を捨鏡

1/22  どかと降る雪や山戸の灯を昏く

1/23  猟夫いましづかに吾子を抱きをり

1/24  かりそめの凍滝ぐわんと屹立す

1/25  言霊の欠片こぼすや寒北斗

1/26  雪眼鏡はるかの海を映したり

1/27  避寒宿妻のねむりを深くして

1/28  寝返れば背ナのひやりと雪女郎

1/29  逃亡のごとく雁木の町をゆく

1/30  皺ふかき掌やぽつねんと囲炉裏守る

1/31  湯気立てて美しきのんどを濡らしをり


師走の句綴り

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1 淋しらの夕のただ中木の葉散る

2 枯蔓の日毎に空を深くせり

3 寒鶯や道の尽きたる杣の里

4 味噌搗や郷のをみなの逞しく

5 古民家の梁を燻すやさくら鍋

6 狐火を点せし村の眠りをり

7 大雪や竃に小さき火を熾す

8 がうがうと山の哭く夜や葛湯吹く

9 聖母子の影古りゆくや冬の園

10 賞与なき吾が身の丈を妻に謝す

11 俗界の色には染まず冬の鵙

12 凍天の昨日今日また明日ありや

13 勇魚突く土佐の男の話かな

14 雲ひくき北の浦里墓囲ふ

15 皓歯もて皮手袋を脱ぐ女

16 迷ひつつ拓く吾が道寒昴

17 月下ひそかに凍土の太りゆく

18 遠き日のたつき思へり掛衾

19 島嶼へと越したる友の歳暮かな

20 神事のごとく炭𥧄に火を入れにけり

21 こまやかな雨なる終大師かな

22 たまゆらの黄金なしたり冬至の陽

23 遺されし者をへだつや冬霞

24 埋火や忘れ去りたき咎をふと

25 寒雲雀なるや野末に沈みしは

26 寄宿舎の窓の灯ひとつ冬休

27 夜をへだつ玻璃に吾が影年の果

28 老いの掌の祷るごとくに注連を綯ふ

29 頬に手をそへたる弥勒冬ぬくし

30 父祖の地をつつむ木霊や斧仕舞

31 ままならぬ心(うら)の奥底獏枕


霜月の句綴り

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11/1   鯖雲や老いの哀歓なきごとく

11/2   虚ろなる貌もて秋の蠅交尾む

11/3   ふるさとは風の通路熟柿落つ

11/4   山霧のこゑに急かるる冬用意

11/5   箸のまづもつてのほかへ走りけり

        *もってのほか=菊膾

11/6   追憶の日々とあそぶや夕紅葉

11/7   内鍵の音のことりと秋終る

11/8   立冬の三和土に鶏の影差せり

11/9   素荒なるお国言葉や冬の海

11/10  茎漬や母は郷よりほか知らず

11/11  今生の冥加を得たり冬茜

11/12  むささびのふたたび月をよぎりけり

11/13  南山のはやき朝(あした)や落葉掃く

        *南山=高野山

11/14  雲の飛ぶ杣の切畑麦を蒔く

11/15  啄むは淀のうたかた残り鷺

11/16  小さき灯を抱きて綿入れ縫ふ母よ

11/17  水神に先づ手を合はせ川普請

11/18  紅葉子を焼くや海鳴り遠くして

        *紅葉子=鱈子

11/19  鉤針のぬめと鮟鱇の吊るし切り

11/20  千年を眠らぬ仏小夜時雨

11/21  野兎の耳たてて聞く月の聲

11/22  石炭のほむら太古の色なせり

11/23  小雪の空や烏のただならず

11/24  冬麗や青の時代のピカソふと

11/25  熊狩の一点射抜く猟夫(さつお)の眼

11/26  風の子のこゑのあそべる冬田かな

11/27  初冬の谿を切り裂く発破音

11/28  寒鯉の動けば空のゆるるなり

11/29  仄暗き廚に母や三の酉

11/30  狼の哭くや荒星かぎりなく

神無月の句綴り

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10/1  笹山の荒れすさまじや蜾蠃追(すがれおい)

      *スズメバチの幼虫の採取法

10/2  秋狂言夜の帷をおろしけり

10/3  露けしや路傍の石も吾が魂も

10/4  手を足を奏づるごとく稲を扱く

10/5  秋濤や流人墓みな海へ向く

10/6  月下の森鹿のまなこの夥し

10/7  唐茄子を斬れとて妻に呼ばれけり

10/8  とある日のちちろのかたる悪巧み

10/9  ランボーの詩片難解秋刀魚焼く

10/10 枸杞の実の空の青きを哀しめり

10/11 われからや耳をふさげば血の聲す

      *われから=藻に住む蟲

10/12 早稲酒の大書ののぼりはためけり

10/13 八千草の一草一花ひそやかに

10/14 橡の実や街の暮らしも見飽きたり

10/15 いにしへの宮へつづくや刈田道

10/16 秋耕の老爺に山の影迫る

10/17 父と子の相似し背ナや鯊日和

10/18 大地剝ぐごとくに蔓をたぐりをり

10/19 今昔(こんじゃく)のこゑを聴かせよ蟲合

10/20 穭田に入りて笛吹く女かな

10/21 蟷螂やひねもす昏き空のあり

10/22 隠れ住む平氏の裔(こはな)一位の実

10/23 己が影をひたすら舐めて秋の蠅

10/24 鯔子(からすみ)や島に悲哀の物語

10/25 霜降や錆のふかまる獣の檻

10/26 東雲の峰や坂鳥波なして

10/27 ゆるやかに澪ひく巨船秋土用

10/28 裏山に狐狸の鳴く夜や胡桃割る

10/29 空せまき峡の一村星流る

10/30 座す石にほのとぬくみや芋煮会

10/31 さびしらの沼のさざなみ木の実落つ





長月の句綴り

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9/1  相寄りてかさなる影や夢二の忌

9/2  水をのむ玩具の鳥や秋じめり

9/3  ふるさとは大きゆりかご芋嵐

9/4  実椿や島めぐりとて小半時

9/5  先づ空の広さをはかり庭木刈る

9/6  かかる世をゆきつもどりつ鬼やんま

9/7  いにしへの人の立ちたる秋夕焼

9/8  天地の音なく明くる白露かな

9/9  己が影を踏んでゆくなり野路の秋

9/10 花園へクルスの影の射しきたり

9/11 一村に一寺一社や豊の秋

9/12 手掴みの真鰯を分け呉れしかな

9/13 泥水にあそぶ土鳩や秋寂し

9/14 朝顔の実を薬袋(やくたい)に十粒ほど

9/15 アダムよりエバの饒舌葡萄園

9/16 落日の歪みなしたり秋の池

9/17 先駆けの鴨か水面に争へる

9/18 蓑虫の鳴くや畝傍の風の中

9/19 父祖の地のかがやきませり今年米

9/20 静てふ月の海の名草雲雀

9/21 岩影にまぎるる秋の蛙かな

9/22 生き死にの恋も昔や西鶴忌

9/23 秋分のわけても白き供華(くうげ)かな

9/24 遠山に出でし瑞雲大根蒔く

9/25 秋水のかなしくあれば詠ふなり

9/26 木犀の夕べしづかな雨を呼ぶ

9/27 秋麗や悪意なき子の悪だくみ

9/28 海流は地球の血汐鳥渡る

9/29 風の色風の香風の谷の中

9/30 日うすき峡の一戸や煙草干す


葉月の句綴り

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8/1  陸奥はまだ知らぬ國海鞘を喰ふ

8/2  青柚子や産土神も吾も古りぬ

8/3  吾が無為を見透かす猫や暑気中り

8/4  蟬死して芥のごとく掃かれけり

8/5  ありし世の夢のごとくに遠花火

8/6  目を閉ぢて水あぶ鳩や広島忌

8/7  五位鷺の秋待つごとく佇めり

8/8  玉石をあらふせせらぎ今朝の秋

8/9  桔梗や月下にねむる杣の里

8/10 幼子の残る暑さをよろこべり

8/11 星々の夜々を眠らずいぼむしり

8/12 荒磯の夜目にも白し秋怒濤

8/13 逆縁のありし一戸や門火燃ゆ

8/14 はらからの恙無きこゑ蓮の飯

8/15 風なくもゆらぐ燭の火魂祭

8/16 星一つきらめく夕べ送り盆

8/17 影法師踏む子のあそび秋の里

8/18 薯蕷(じょよ)抜きし跡の地球を覗きみる

8/19 鯊船のゆれるともなくゆれてをり

8/20 二星の妻は飛雲に隠れをり

8/21 がさごそと大地くすぐり蝗捕

8/22 寝付かれぬ飛騨の旅寓や牡鹿啼く

8/23 雀等のこゑ湧く処暑の朝かな

8/24 どの道をゆけど穂草のからみつく

8/25 山の名を冠する風や実山椒

8/26 耳朶になほ余韻のごとく蟲時雨

8/27 つかの間の恋につくすやつくつくし

8/28 盆東風や蓮の一葉の帆のごとく

8/29 一条の夕日にぬれて秋雀

8/30 還らざる島の間近や実玫瑰

8/31 黄金なす稲穂に黄金なす入日
 




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文月の句綴り

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7/1  虹を指す子や虹色の瞳もて

7/2  愚鈍なる吾にかへるや昼寝覚

7/3  遠き日の災禍の記憶水見舞

7/4  その女ほそき指もて蝦蛄喰らふ

7/5  潮風と時空とアイスコーヒーと

7/6  ラベンダー触れたる指の夜も匂ふ

7/7  遺伝子のどこか欠けたる小暑かな

7/8  道草の妹よ蚊帳吊草裂かん

7/9  此処に生き此処に死にゆく青田波

7/10 浦里に宿る一夜や握り鮨

7/11 蛇の眼の残れる草を打ちはらふ

7/12 砂山に大志を記する晩夏かな

7/13 母いつももんぺ姿や鳳仙花

7/14 空蝉を吾が掌にのせてくれし子よ

7/15 少女まだ悲恋を知らずかき氷

7/16 今生の咎を曝すや大西日

7/17 その時の来たりて湯気を焼茄子

7/18 夏の夜のどの煩悩に狂はうか

7/19 黎明の魁なるや紅蓮

7/20 身ほとりの影濃き土用太郎かな

7/21 海見ゆる露台に白き椅子二つ

7/22 大海をたゆたふ夢やハンモック

7/23 自堕落を絵に描くごとき大暑かな

7/24 鉢裂いて出づる芽のあり不死男の忌

7/25 野馬追の若武者を追ふ乙女の眼

7/26 石塊(いしくれ)をよすがに夜の青蜥蜴

7/27 白装の母子と野辺に行き違ふ

7/28 名を問へば屁糞葛と答へけり

7/29 昼の蚊のひそむ寺領の厠かな

7/30 岨路の歩を乱鶯に急かさるる

7/31 雨止むを待ちてふたたび子の神輿




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水無月の句綴り

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6/1  車前草(おおばこ)の花や流離の身をうれふ

6/2  立葵一花は天に触れてをり

6/3  流さるることを厭はず水すまし

6/4  結葉の空奪ひ合ふ手の無数

6/5  首頻りなり葬の家の扇風機

6/6  山の井のかをりいや増す芒種かな

6/7  どくだみの花の盛りをだれ知らず

6/8  風鈴売とともに信号待ちてをり

6/9  青鮫のざんぶと哭きてさみだるる

6/10 少年に返る一瞬栗の花

6/11 海神(わだつみ)の使徒のごとくに飛魚とべり

6/12 日覆や日に一便の船を待つ

6/13 水虫や進化てふものあざ笑ふ

6/14 せせらぎを子守唄とし川蜻蛉

6/15 天平の風を海馬へ籠枕

6/16 青鷺の動くともなく動きけり

6/17 ふり返り見れば蒼しや夏灯

6/18 子のこゑに羽うまれたる水遊び

6/19 赤々と闇にとけゆく夜店の灯

6/20 銅鑼の音のひときは高く梅雨晴間

6/21 父が投げし早苗を母は黙々と

6/22 のほほんと世の片隅を夏至ゆうべ

6/23 汗ばめる鎖骨を出でし吐息かな

6/24 神仙の白馬と会へり夏木立

6/25 蛍火に放物線やつうと消ゆ

6/26 誰も知らぬ風の行方や矢車草

6/27 鴨の子のひとつの水尾にしたがへり

6/28 荒梅雨の闇をひたすら見つめをり

6/29 子をもたぬ人を照らせり花柘榴

6/30 大岩をたたく飛沫やカヌー過ぐ





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皐月の句綴り

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5/1  黄昏の中へ中へと春の鴨

5/2  独り子や雀の槍を吹き鳴らす

5/3  花烏賊や陸(くが)に浮かべる富士の嶺

5/4  なにごともなきかに尿(ばり)を競べ馬

5/5  山峡の裔(こはな)つなぐや初のぼり

5/6  万物に立夏の影の生まれけり

5/7  母の名を呼ばざる父や花菜漬

5/8  滝壺にひそめる魚の涯(はて)をふと

5/9  昔日にとどかぬ草矢放ちけり

5/10 母の日の軒端すずめのよく鳴けり

5/11 夏蕨懸け樋の水に浸しあり

5/12 海風のいまは夕風船遊び

5/13 茄子漬の高貴なる紫を深くせり

5/14 身をまかすデッキチェアーや夏はじめ

5/15 役牛の葵ふみゆく祭かな

5/16 人去りし沼のしじまや花あやめ

5/17 海ほほづき少女の嘘をゆるしけり

5/18 小骨切る音かろやかや鱧の宿

5/19 ジオラマのごとき鉄路や緑さす

5/20 山雀のよく鳴く雨余の山家かな

5/21 小満の溢水いよよ高鳴れり

5/22 風音を友の声とも樟若葉

5/23 白玉や子の哀歓を共にして

5/24 芋虫の匍匐前進とは笑止

5/25 物の怪を語る媼や青時雨

5/26 競市の桶をゆるりと錦鯉

5/27 身ほとりに魚の舞ふ夢水中り

5/28 気塞ぎのひとつ失せたり夏の月

5/29 幼鳥のこゑ許されよ夜の新樹

5/30 蚊柱の狂喜乱舞にぶち当たる

5/31 天使魚夜の静寂を堪へてをり





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卯月の句綴り

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4/1  ラマンチャの男一途や万愚説

4/2  熊蜂の己が重さを持て余す

4/3  九九がもう唄へるんだね水の春

4/4  春月や母貝のねむる阿古屋湾

4/5  清明や幼子はこゑ惜しみなく

4/6  風あれば風の形に糸柳

4/7  首洗池の日溜まり蝌蚪の紐

4/8  チューリップ夜はかたくなに口とぢて

4/9  聖母子の影やはらかに春の芝

4/10 藍微塵妊婦しづかに書を閉づる

4/11 だまし絵の水のぼりゆく春の月

4/12 母逝きしなぞへの畑や麦青む

4/13 昼よりも夕べあかるし花馬酔木

4/14 一村の靄にねむるや春の山

4/15 春興の手足に先を急かさるる

4/16 山査子の花や仇なす恋ひとつ

4/17 荒草(こうそう)の衣をしろがねに春の露

4/18 雲雀野にあそぶや光まとひつつ

4/19 湖を分つ小舟や春深し

4/20 山河なほ青くけむれる穀雨かな

4/21 束の間の快楽に似たり春霰

4/22 ライラック乙女の像のいよ古りて

4/23 風炎(ふうえん)や沖にたゆとふ海人小舟

     *風炎=フェーン現象

4/24 永き日のこきりと鳴りし首の骨

4/25 野にあれば童女なりしよ蓮華草

4/26 春曙やはらかき手に触れもせで

4/27 潮干潟カンブリア紀もデボン紀も

4/28 頬刺の藁に蝦夷(えみし)の海にほふ

4/29 浦里の母たくましや磯菜摘

4/30 クレソンや生きよ生きよと水のこゑ

4/31 黄昏にただよふばかり春の鴨


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