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師走の句綴り

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1 淋しらの夕のただ中木の葉散る

2 枯蔓の日毎に空を深くせり

3 寒鶯や道の尽きたる杣の里

4 味噌搗や郷のをみなの逞しく

5 古民家の梁を燻すやさくら鍋

6 狐火を点せし村の眠りをり

7 大雪や竃に小さき火を熾す

8 がうがうと山の哭く夜や葛湯吹く

9 聖母子の影古りゆくや冬の園

10 賞与なき吾が身の丈を妻に謝す

11 俗界の色には染まず冬の鵙

12 凍天の昨日今日また明日ありや

13 勇魚突く土佐の男の話かな

14 雲ひくき北の浦里墓囲ふ

15 皓歯もて皮手袋を脱ぐ女

16 迷ひつつ拓く吾が道寒昴

17 月下ひそかに凍土の太りゆく

18 遠き日のたつき思へり掛衾

19 島嶼へと越したる友の歳暮かな

20 神事のごとく炭𥧄に火を入れにけり

21 こまやかな雨なる終大師かな

22 たまゆらの黄金なしたり冬至の陽

23 遺されし者をへだつや冬霞

24 埋火や忘れ去りたき咎をふと

25 寒雲雀なるや野末に沈みしは

26 寄宿舎の窓の灯ひとつ冬休

27 夜をへだつ玻璃に吾が影年の果

28 老いの掌の祷るごとくに注連を綯ふ

29 頬に手をそへたる弥勒冬ぬくし

30 父祖の地をつつむ木霊や斧仕舞

31 ままならぬ心(うら)の奥底獏枕


霜月の句綴り

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11/1   鯖雲や老いの哀歓なきごとく

11/2   虚ろなる貌もて秋の蠅交尾む

11/3   ふるさとは風の通路熟柿落つ

11/4   山霧のこゑに急かるる冬用意

11/5   箸のまづもつてのほかへ走りけり

        *もってのほか=菊膾

11/6   追憶の日々とあそぶや夕紅葉

11/7   内鍵の音のことりと秋終る

11/8   立冬の三和土に鶏の影差せり

11/9   素荒なるお国言葉や冬の海

11/10  茎漬や母は郷よりほか知らず

11/11  今生の冥加を得たり冬茜

11/12  むささびのふたたび月をよぎりけり

11/13  南山のはやき朝(あした)や落葉掃く

        *南山=高野山

11/14  雲の飛ぶ杣の切畑麦を蒔く

11/15  啄むは淀のうたかた残り鷺

11/16  小さき灯を抱きて綿入れ縫ふ母よ

11/17  水神に先づ手を合はせ川普請

11/18  紅葉子を焼くや海鳴り遠くして

        *紅葉子=鱈子

11/19  鉤針のぬめと鮟鱇の吊るし切り

11/20  千年を眠らぬ仏小夜時雨

11/21  野兎の耳たてて聞く月の聲

11/22  石炭のほむら太古の色なせり

11/23  小雪の空や烏のただならず

11/24  冬麗や青の時代のピカソふと

11/25  熊狩の一点射抜く猟夫(さつお)の眼

11/26  風の子のこゑのあそべる冬田かな

11/27  初冬の谿を切り裂く発破音

11/28  寒鯉の動けば空のゆるるなり

11/29  仄暗き廚に母や三の酉

11/30  狼の哭くや荒星かぎりなく

神無月の句綴り

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10/1  笹山の荒れすさまじや蜾蠃追(すがれおい)

      *スズメバチの幼虫の採取法

10/2  秋狂言夜の帷をおろしけり

10/3  露けしや路傍の石も吾が魂も

10/4  手を足を奏づるごとく稲を扱く

10/5  秋濤や流人墓みな海へ向く

10/6  月下の森鹿のまなこの夥し

10/7  唐茄子を斬れとて妻に呼ばれけり

10/8  とある日のちちろのかたる悪巧み

10/9  ランボーの詩片難解秋刀魚焼く

10/10 枸杞の実の空の青きを哀しめり

10/11 われからや耳をふさげば血の聲す

      *われから=藻に住む蟲

10/12 早稲酒の大書ののぼりはためけり

10/13 八千草の一草一花ひそやかに

10/14 橡の実や街の暮らしも見飽きたり

10/15 いにしへの宮へつづくや刈田道

10/16 秋耕の老爺に山の影迫る

10/17 父と子の相似し背ナや鯊日和

10/18 大地剝ぐごとくに蔓をたぐりをり

10/19 今昔(こんじゃく)のこゑを聴かせよ蟲合

10/20 穭田に入りて笛吹く女かな

10/21 蟷螂やひねもす昏き空のあり

10/22 隠れ住む平氏の裔(こはな)一位の実

10/23 己が影をひたすら舐めて秋の蠅

10/24 鯔子(からすみ)や島に悲哀の物語

10/25 霜降や錆のふかまる獣の檻

10/26 東雲の峰や坂鳥波なして

10/27 ゆるやかに澪ひく巨船秋土用

10/28 裏山に狐狸の鳴く夜や胡桃割る

10/29 空せまき峡の一村星流る

10/30 座す石にほのとぬくみや芋煮会

10/31 さびしらの沼のさざなみ木の実落つ





長月の句綴り

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9/1  相寄りてかさなる影や夢二の忌

9/2  水をのむ玩具の鳥や秋じめり

9/3  ふるさとは大きゆりかご芋嵐

9/4  実椿や島めぐりとて小半時

9/5  先づ空の広さをはかり庭木刈る

9/6  かかる世をゆきつもどりつ鬼やんま

9/7  いにしへの人の立ちたる秋夕焼

9/8  天地の音なく明くる白露かな

9/9  己が影を踏んでゆくなり野路の秋

9/10 花園へクルスの影の射しきたり

9/11 一村に一寺一社や豊の秋

9/12 手掴みの真鰯を分け呉れしかな

9/13 泥水にあそぶ土鳩や秋寂し

9/14 朝顔の実を薬袋(やくたい)に十粒ほど

9/15 アダムよりエバの饒舌葡萄園

9/16 落日の歪みなしたり秋の池

9/17 先駆けの鴨か水面に争へる

9/18 蓑虫の鳴くや畝傍の風の中

9/19 父祖の地のかがやきませり今年米

9/20 静てふ月の海の名草雲雀

9/21 岩影にまぎるる秋の蛙かな

9/22 生き死にの恋も昔や西鶴忌

9/23 秋分のわけても白き供華(くうげ)かな

9/24 遠山に出でし瑞雲大根蒔く

9/25 秋水のかなしくあれば詠ふなり

9/26 木犀の夕べしづかな雨を呼ぶ

9/27 秋麗や悪意なき子の悪だくみ

9/28 海流は地球の血汐鳥渡る

9/29 風の色風の香風の谷の中

9/30 日うすき峡の一戸や煙草干す


葉月の句綴り

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8/1  陸奥はまだ知らぬ國海鞘を喰ふ

8/2  青柚子や産土神も吾も古りぬ

8/3  吾が無為を見透かす猫や暑気中り

8/4  蟬死して芥のごとく掃かれけり

8/5  ありし世の夢のごとくに遠花火

8/6  目を閉ぢて水あぶ鳩や広島忌

8/7  五位鷺の秋待つごとく佇めり

8/8  玉石をあらふせせらぎ今朝の秋

8/9  桔梗や月下にねむる杣の里

8/10 幼子の残る暑さをよろこべり

8/11 星々の夜々を眠らずいぼむしり

8/12 荒磯の夜目にも白し秋怒濤

8/13 逆縁のありし一戸や門火燃ゆ

8/14 はらからの恙無きこゑ蓮の飯

8/15 風なくもゆらぐ燭の火魂祭

8/16 星一つきらめく夕べ送り盆

8/17 影法師踏む子のあそび秋の里

8/18 薯蕷(じょよ)抜きし跡の地球を覗きみる

8/19 鯊船のゆれるともなくゆれてをり

8/20 二星の妻は飛雲に隠れをり

8/21 がさごそと大地くすぐり蝗捕

8/22 寝付かれぬ飛騨の旅寓や牡鹿啼く

8/23 雀等のこゑ湧く処暑の朝かな

8/24 どの道をゆけど穂草のからみつく

8/25 山の名を冠する風や実山椒

8/26 耳朶になほ余韻のごとく蟲時雨

8/27 つかの間の恋につくすやつくつくし

8/28 盆東風や蓮の一葉の帆のごとく

8/29 一条の夕日にぬれて秋雀

8/30 還らざる島の間近や実玫瑰

8/31 黄金なす稲穂に黄金なす入日
 




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文月の句綴り

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7/1  虹を指す子や虹色の瞳もて

7/2  愚鈍なる吾にかへるや昼寝覚

7/3  遠き日の災禍の記憶水見舞

7/4  その女ほそき指もて蝦蛄喰らふ

7/5  潮風と時空とアイスコーヒーと

7/6  ラベンダー触れたる指の夜も匂ふ

7/7  遺伝子のどこか欠けたる小暑かな

7/8  道草の妹よ蚊帳吊草裂かん

7/9  此処に生き此処に死にゆく青田波

7/10 浦里に宿る一夜や握り鮨

7/11 蛇の眼の残れる草を打ちはらふ

7/12 砂山に大志を記する晩夏かな

7/13 母いつももんぺ姿や鳳仙花

7/14 空蝉を吾が掌にのせてくれし子よ

7/15 少女まだ悲恋を知らずかき氷

7/16 今生の咎を曝すや大西日

7/17 その時の来たりて湯気を焼茄子

7/18 夏の夜のどの煩悩に狂はうか

7/19 黎明の魁なるや紅蓮

7/20 身ほとりの影濃き土用太郎かな

7/21 海見ゆる露台に白き椅子二つ

7/22 大海をたゆたふ夢やハンモック

7/23 自堕落を絵に描くごとき大暑かな

7/24 鉢裂いて出づる芽のあり不死男の忌

7/25 野馬追の若武者を追ふ乙女の眼

7/26 石塊(いしくれ)をよすがに夜の青蜥蜴

7/27 白装の母子と野辺に行き違ふ

7/28 名を問へば屁糞葛と答へけり

7/29 昼の蚊のひそむ寺領の厠かな

7/30 岨路の歩を乱鶯に急かさるる

7/31 雨止むを待ちてふたたび子の神輿




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水無月の句綴り

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6/1  車前草(おおばこ)の花や流離の身をうれふ

6/2  立葵一花は天に触れてをり

6/3  流さるることを厭はず水すまし

6/4  結葉の空奪ひ合ふ手の無数

6/5  首頻りなり葬の家の扇風機

6/6  山の井のかをりいや増す芒種かな

6/7  どくだみの花の盛りをだれ知らず

6/8  風鈴売とともに信号待ちてをり

6/9  青鮫のざんぶと哭きてさみだるる

6/10 少年に返る一瞬栗の花

6/11 海神(わだつみ)の使徒のごとくに飛魚とべり

6/12 日覆や日に一便の船を待つ

6/13 水虫や進化てふものあざ笑ふ

6/14 せせらぎを子守唄とし川蜻蛉

6/15 天平の風を海馬へ籠枕

6/16 青鷺の動くともなく動きけり

6/17 ふり返り見れば蒼しや夏灯

6/18 子のこゑに羽うまれたる水遊び

6/19 赤々と闇にとけゆく夜店の灯

6/20 銅鑼の音のひときは高く梅雨晴間

6/21 父が投げし早苗を母は黙々と

6/22 のほほんと世の片隅を夏至ゆうべ

6/23 汗ばめる鎖骨を出でし吐息かな

6/24 神仙の白馬と会へり夏木立

6/25 蛍火に放物線やつうと消ゆ

6/26 誰も知らぬ風の行方や矢車草

6/27 鴨の子のひとつの水尾にしたがへり

6/28 荒梅雨の闇をひたすら見つめをり

6/29 子をもたぬ人を照らせり花柘榴

6/30 大岩をたたく飛沫やカヌー過ぐ





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皐月の句綴り

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5/1  黄昏の中へ中へと春の鴨

5/2  独り子や雀の槍を吹き鳴らす

5/3  花烏賊や陸(くが)に浮かべる富士の嶺

5/4  なにごともなきかに尿(ばり)を競べ馬

5/5  山峡の裔(こはな)つなぐや初のぼり

5/6  万物に立夏の影の生まれけり

5/7  母の名を呼ばざる父や花菜漬

5/8  滝壺にひそめる魚の涯(はて)をふと

5/9  昔日にとどかぬ草矢放ちけり

5/10 母の日の軒端すずめのよく鳴けり

5/11 夏蕨懸け樋の水に浸しあり

5/12 海風のいまは夕風船遊び

5/13 茄子漬の高貴なる紫を深くせり

5/14 身をまかすデッキチェアーや夏はじめ

5/15 役牛の葵ふみゆく祭かな

5/16 人去りし沼のしじまや花あやめ

5/17 海ほほづき少女の嘘をゆるしけり

5/18 小骨切る音かろやかや鱧の宿

5/19 ジオラマのごとき鉄路や緑さす

5/20 山雀のよく鳴く雨余の山家かな

5/21 小満の溢水いよよ高鳴れり

5/22 風音を友の声とも樟若葉

5/23 白玉や子の哀歓を共にして

5/24 芋虫の匍匐前進とは笑止

5/25 物の怪を語る媼や青時雨

5/26 競市の桶をゆるりと錦鯉

5/27 身ほとりに魚の舞ふ夢水中り

5/28 気塞ぎのひとつ失せたり夏の月

5/29 幼鳥のこゑ許されよ夜の新樹

5/30 蚊柱の狂喜乱舞にぶち当たる

5/31 天使魚夜の静寂を堪へてをり





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卯月の句綴り

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4/1  ラマンチャの男一途や万愚説

4/2  熊蜂の己が重さを持て余す

4/3  九九がもう唄へるんだね水の春

4/4  春月や母貝のねむる阿古屋湾

4/5  清明や幼子はこゑ惜しみなく

4/6  風あれば風の形に糸柳

4/7  首洗池の日溜まり蝌蚪の紐

4/8  チューリップ夜はかたくなに口とぢて

4/9  聖母子の影やはらかに春の芝

4/10 藍微塵妊婦しづかに書を閉づる

4/11 だまし絵の水のぼりゆく春の月

4/12 母逝きしなぞへの畑や麦青む

4/13 昼よりも夕べあかるし花馬酔木

4/14 一村の靄にねむるや春の山

4/15 春興の手足に先を急かさるる

4/16 山査子の花や仇なす恋ひとつ

4/17 荒草(こうそう)の衣をしろがねに春の露

4/18 雲雀野にあそぶや光まとひつつ

4/19 湖を分つ小舟や春深し

4/20 山河なほ青くけむれる穀雨かな

4/21 束の間の快楽に似たり春霰

4/22 ライラック乙女の像のいよ古りて

4/23 風炎(ふうえん)や沖にたゆとふ海人小舟

     *風炎=フェーン現象

4/24 永き日のこきりと鳴りし首の骨

4/25 野にあれば童女なりしよ蓮華草

4/26 春曙やはらかき手に触れもせで

4/27 潮干潟カンブリア紀もデボン紀も

4/28 頬刺の藁に蝦夷(えみし)の海にほふ

4/29 浦里の母たくましや磯菜摘

4/30 クレソンや生きよ生きよと水のこゑ

4/31 黄昏にただよふばかり春の鴨


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弥生の句綴り

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3/1  段畑に嬉々たる母や土の春

3/2  此処よりは神の領域わらび採

3/3  幾人(いくたり)の哀別見しや古雛

3/4  梅東風や鉦の音をひく野辺送り

3/5  浜に火を囲む男や若布刈

3/6  啓蟄や児は汚るるを厭はずに

3/7  天球をまはす神の手地虫出づ

3/8  トゥオネラの白鳥引くを哀しめり

3/9  実をつけしものもちらほら苗木売

3/10 春意なほ飛べざる鳥の羽ばたけり

3/12 いにしへの野にあるごとく蓬摘む

3/13 たらの芽や山居の刻のたらたらと

3/14 初蝶の曳きたる影を見失ふ

3/15 蒼穹の青の詩片や犬ふぐり

3/16 万別の畑のまだらや去年の雪

3/17 異なものをオブジェのごとく鴉の巣

3/18 さざ波にわけなく押され浮氷

3/19 中天に彩雲見たり入彼岸

3/20 ピカソとて青の時代を鳥の恋

3/21 春分のわけても児(やや)のかがやけり

3/22 草の芽の草の芽としてただしづか

3/23 渦潮のゆるびて吾を取り返す

3/24 春禽の狂へり甘き空の香に

3/25 紀ノ國の潮早しや初櫻

3/26 永き日の縞馬にある躁と鬱

3/27 花鳥の名を問ふ人や昼の月

3/28 はこべらや故なく家を棄てし友

3/29 巡礼の笠に触れたり紅枝垂

3/30 茎立や同胞(はらから)のみなちりぢりに

3/31 春塵や眼光ませる仁王像










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如月の句綴り


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2/1  野施行の子が霜路をもどりくる

2/2  鈍色をかへす日面冬の果

2/3  護摩壇の激つ火の舞鬼やらひ

2/4  立春の音ゆたかなる山の水

2/5  寒明の谺となりし発破音

2/6  何せむと野におり立つや春鴉

2/7  海苔の香にまみれて舟のもどり来る

2/8  あはあはと雪ふる夕べ針納

2/9  壷焼や浦うつくしき伊勢の國

2/10 母と子の影よりそふや浅き春

2/11 耳朶を刺す風の記憶や半仙戯

2/12 夕迫る峡の一戸や春子採り

2/13 消えしかと思ひし野火のまた走る

2/14 春雷やまだ見ぬ宙の底方(そこい)より

2/15 邂逅の夜を一点の紅椿

2/16 相寄りて思ひは異に春灯

2/17 淡雪のふり頻く余呉の汀かな

2/18 野老掘り雲は高嶺をやすやすと

2/19 農小屋に錆のにほへる雨水かな

2/20 頸椎のこきりと鳴るや春の暮

2/21 蒼穹に枝さし交し木の芽張る

2/22 風はもう鳴りやみたるよ懸り凧

2/23 まれびとの声ふくらむや梅見茶屋

2/24 身の丈にあへる生活(たつき)や梅真白

2/25 青饅や遠くなりゆく母の恩

2/26 地芝居のはね淡月の畦帰る

2/27 きららかにこぼるる水の音ぬくし

2/28 愚鈍なる雲を孕みて二月果つ



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睦月の句綴り

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1/1  来し方の今は昔や年立てり

1/2  すずろなるすずめのこゑや初寝覚

1/3  御降りの音なく濡らす大河かな

1/4  なにせむと立つや四日の橋の上

1/5  太箸や産んでくれたる母の恩

1/6  小寒の雲やひかりを纏ひつつ

1/7  人日の日の射しくもる文机

1/8  つぶやきに似たり媼の手毬唄

1/9  雲に雲ぶつかり寒に入りにけり

1/10 鵺の鳴く闇を背(そびら)や焚火守

1/11 修験者の法螺に始まる鏡割

1/12 風邪声の女の隣る夜汽車かな

1/13 鳥墜ちて凍湖と星のひかり合ふ

1/14 遠ざかる母のおもかげ根深汁

1/15 海鳴りを遠く郷里の寒漉女

1/16 群青の天ぞ知りたる垂氷かな

1/17 吹雪へとヘッドライトの突き刺さる

1/18 枯山の一戸かぼそき灯を点す

1/19 褞袍着て用あるごとく外に出でり

1/20 大寒や野猿のわたる峡の空

1/21 ゆくあてのなき身を押せり枯葉風

1/22 おのころの海たひらかや野水仙

1/23 寒暁の竈にけふの火を熾す

1/24 猟夫いま子を高々と抱きあぐる

1/25 此の橋を渡れば異郷霜畳

1/26 寒苺摘む妹の手のかぼそけり

1/27 雪沓の手をとり山の分校へ

1/28 一文字のひときは白き一字かな

1/29 霧氷もや朝日の綺羅を零しをり

1/30 あやふやな海馬の糸や梅さぐる

1/31 柴垣を夜毎たたくや北颪


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十二月の句綴り

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12/1  蒼穹へ火を吐くごとく鶴啼けり

12/2  一片を死水に落し冬桜

12/3  時雨忌の靴紐かたく結びけり

12/4  落柿舎を問へば指さす時雨虹

12/5  幸ひのあるかに集ふ冬日向

12/6  濡れそぼつ芭蕉生家や枇杷の花

12/7  大雪の郷よりとどく畑の物

12/8  星々をゆらせてゐたる枯木かな

12/9  消防車去りて夜明けの始まれり

12/10 寝落ちたる太郎次郎や雪月夜

12/11 雪嶺の襞にあやなす入日かな

12/12 夢にまた妣のこゑ聞く風邪心地

12/13 絨毯にあり捨て去りし日の名残

12/14 瘦せ犬をつなぐ鉄鎖や寒北斗

12/15 鱈汁を啜るや昏き海見つつ

12/16 日を恋うて日に逆ろうて寒牡丹

12/17 安意なき日や凍天を仰ぎ見る

12/18 血の澪をひく幻の捕鯨船

12/19 皹の指でめくるや「罪と罰」

12/20 山影を濡らす山湖や暮易し

12/21 虎落笛闇に目玉をさらしゐて

12/22 灯を点し舌口すすぐ冬至かな

12/23 足跡を追へどこゑなき寒さかな

12/24 夜の底の危うき寄す処冬林檎

12/25 諸人の去りてなほ濃く聖夜の灯

12/26 裏山の父が榾木やよく爆ぜる

12/27 見えぬ星あまた隠せり冬銀河

12/28 淡海の面を凍雲のうごかざり

12/29 燈台の灯のきりきりと年詰る

12/30 霜夜ゆく影に覚えのありにけり

12/31 言の葉をつむぐうつつや年の果

十一月の句綴り

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11/1  老農の風読む秋の別れかな

11/2  露草の蔭より小さき夢拾ふ

11/3  栗虫の穴ある栗を拾ひけり

11/4  山ふかき湯里の暮色ぬくめ酒

11/5  大川のほとり夜寒の灯が一つ

11/6  火の國のけむり吐く山土瓶蒸

11/7  立冬の河原や椋の群翔てり

11/8  海鳴りをちかく行旅の方頭魚

11/9  冬水や杣のたつきの一途なる

11/10 月明の帆のごとくゆく熊手かな

11/11 蕎麦掻や母は郷よりほか知らず

11/12 青鷺の歩み遅々たり冬はじめ

11/13 むささびのふたたび月をよぎりたり

11/14 うつつなき蝶の影ひく小六月

11/15 里山の午や空稲架に蒲団干す

11/16 初霜をゆくは安寿か厨子王か

11/17 白拍子住みたる庵や実千両

11/18 壁越しのくしやみ聞こゆる朝まだき

11/19 木守柿古老に風の名を問へり

11/20 返り咲く花に親しき虚空かな

11/21 かいつぶり海に常世のあるごとく

11/22 モノトーンめく小雪の天も地も

11/23 大淀川の澱の末枯るる寒暮かな

11/24 真青なる風に鎌ふる枯蟷螂

11/25 楼閣の雨にけぶるや三島の忌

11/26 夢捨てて皮ジャンパーの重たかり

11/27 大根引き尻もぞもぞとさせてをり

11/28 鵺鳥のこゑの透けくる夜の襖

11/29 國引きの神立つ浜や冬怒濤

11/30 太古へと還るにほひや落葉焚








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十月の句綴り

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10/1  山風を采の目にして障子干す

10/2  丼に盛られ艶めく筋子かな

10/3  白菊やおもかげの皆モノトーン

10/4  海光の闇にまぎるる帰燕かな

10/5  草の実のとんで暮色をのこしけり

10/6  妹が背をせがむ山路や十三夜

10/7  老蝶のなほきららなる翅もてり

10/8  嬰児の産毛きらめく寒露かな

10/9  花蕊を這へる葉虫のさま見たり

10/10 月蝕の尽きて足下の虫すだく

10/11 万葉の歌くちずさぶ稲穂かな

10/12 ゆり椅子にブッセの詩片小鳥来る

10/13 深秋や万の目をもつ慈母地蔵

10/14 日輪の大いなるかな吊し柿

10/15 吾になほ生きよ生きよと鶴渡る

10/16 伝世の井戸が自慢や荒走

10/17 白馬ながき影をひきゆく秋意かな

10/18 秋水の淋しらに耐へ忍びたり

10/19 大いなる野猪や罠の錆を噛む

10/20 杉の実や鎮守の杜に子の遊ぶ

10/21 蒔くあてのなき種を採る夕べかな

10/22 母恋へど母のこゑなき秋の空

10/23 霜降の身ほとりに添ふ火影哉

10/24 日の本の日の香たつぷり今年米

10/25 父のなき父が裏山しめぢ茸

10/26 実南天児のある家の児の匂ふ

10/27 残菊の淡き影おく古刹かな

10/28 潮の香のをみな朱欒(ざぼん)を真二つに

10/29 紅葉且つ散る僧正の戯画の上(へ)に

10/30 手にしたる是は虚栗(みなしぐり)かも知れず

10/31 木の実時雨おくれがちなる吾を急かす




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